小学生の部

大賞

ルークの小さな世界
八幡市立美濃山みのやま小学校 6年 友野 裕太ともの ゆうた

 僕には弟分のトイプードルのルークがいる。家族からは、どっちが兄でどっちが弟なんだか??といわれるけど、そんなことは、どうでもいい。ある日、家の中で二人、いや、ひとりと一匹で走りまわり遊んでいると、母の「散歩にでも行きなさい!」というかみなりが落ちた。
 僕はしぶしぶルークと一緒に家を出た。「今日は、どこに散歩行く?」とルークに聞いても、もちろん答えてくれず、嬉しそうにしっぽを振っているだけだった。
 ふと、「今日はルークになってみよう」というアイデアがうかんだ。いつもの散歩コースを歩き、走りながら、時々ルークの目線になってしゃがんでみる。すると、見慣れた僕のひざくらいのただの草むらが、自分のせより高く、まるで雑木林のようで目の前になにか大きな虫が飛び出てきそうな、そんなドキッとする感じがした。
 ルークはこわがりでおく病者だ。小さな犬でもすぐ逃げる。情けないなあ、と思ってたけど、前から来る犬を見ると案外こわいかもしれない。少しルークの気持ちが分かった。
 いつもの公園に着いた。ここでもルークと一緒にしゃがんでみたら、花だんの花が大きく見えた。公園もいつも以上に大きく見えた。そこにゴミを拾ってくれている人がいた。「公園でボール遊びをしていたらおこられたおっちゃんだ」。僕はドキッとした。でも、今日はニコニコしながら花の手入れや水やりもしていた。僕たちの知らないところで公園をきれいにしてくれているおっちゃんがいることもはじめて気付いた。
 いつもの道といつもの見慣れた公園。当たり前のことが少し目の高さを変えるだけで、いつもと違う景色になることに気づいた。しぶしぶときた散歩だったけど、たまには弟との冒険もいいと思った。またちがうところに行ってみよう。

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