中学生の部

大賞

めくるめく成長過程
東京都立富士高等学校附属中学校 3年 宮本 桜帆みやもと さほ

 中学生は竹のように成長する。またたく間に見える世界が変わっていくのだ。
 中学校生活も三年目になるが、私の身長は未だに伸びるきざしを見せていない。入学前、きっと伸びるだろうと期待を胸に買った大きめの制服は手まですっぽりとおおわれたままだし、少し長めに採寸さいすんしたスカートは長いまま垢抜あかぬけない。もちろん1センチ大きいものを買った上履うわばきも先が余らなくなることはなかった。
 148センチの身長は、中学一年生にとっては平均くらいである。自分の見ている景色は周りのみんなと同じ高さで、少し小柄な男子なんかをからかっていた。
 中一の夏休みが明けて、一ヶ月ぶりに学校の皆と会う。まるで自分が不思議のアリスのごとちぢんでしまったのかと思った。今まで同じ目線で話していた人達が少し高い所にいたのだ。教室は心無しか少し狭くなっているように思えた。
 二年生になって、身長が3ミリ伸びた。誤差の範囲だったのだろう。今年も私の目線は変わらない。そんな日々の中、目線以外にも変わっていくものがあることに気づいた。クラスの交友関係、誰と誰とが付き合っているのか、別れたのか。
 私も友人が増えて、自分自身の考えも色々と変わっていった。目線は変わらずとも、物事をとらえる視点は私自身が戸惑うほどに変わっていった。
 そんなある日、私は一人の男の子に告白された。恋をするというのはこんなにも世界が輝いて見えるのかと驚いた。他愛もない会話の一つ一つがカラフルで、一緒に歩いた道は思い出の道になる。どんなに素晴らしいことだったか。別れるまでの一ヶ月半はとても有意義だったと胸を張れる。
 大きな視点の変化があった中二の最後は、家で過ごすこととなった。学校は休校になり、変わり映えのない日々が続いた。
 そして休校が明け、約三ヶ月ぶりの学校で私は再び大きな衝撃を受けることになった。今まで目線を上げるだけで目が合っていた友達が、首を上げなければ目が合わないほどに成長していた。クラスメイトがみな大人びているように見えた。
 三ヶ月で人は意外と成長するものなのか、それとも私が見えていなかっただけなのか。何にしても私の身長は今年も全く伸びていなかった。しかし、その分変わらない目線から見える周りの変化は、少し楽しみだったりする。
 変わらない目線に目まぐるしく変わっていく視点。ニョキニョキと周りが変化して、自分も変わっていく。これからもきっと私の世界は変わっていくだろう。それが楽しみで仕方ない。

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