小学生の部

優秀賞

正直ものの手
愛媛大学教育学部附属小学校 2年 若狹 わかさ そう

 じゅぎょう中、ぼくは少しこまっている。
「このもんだいに、答えられる人」
 ああ、ぼくの手がうごいてくれない。まちがってもいいと分かっているのに。それでも、ぼくの手はこおりついたまま。ほかの子が答えはじめると、だんだんこおりはとけていくけれど。あげたらあげたで、ぼくの手はあせでダラダラ、ドロドロだ。一体ぜんたい、さむいのやらあついのやら。
 小学校に入学した日、
「先生がすきなことは何でしょう?」
 一年花組たんにんのことみ先生から、さいしょのもんだいが出た。
「しゃしんをとること!」
 すぐに手をあげて答える子がいて、ぼくはびっくりした。ことみ先生が首からカメラをぶら下げていたのが、ヒントだったようだ。
「先生はお山にのぼって、しゃしんをとることがすきです。お山でごはんを作ることもすきです」
 ことみ先生は、ピカピカに晴れた山のしゃしんと、たまごりょうりのしゃしんを見せてくれた。小さなフライパンに目玉やき、とてもきれいなたまごやき、そしてゆでたまごのしゃしんもあった。ことみ先生のすきな食べものはたまごなんだな、とぼくは思った。
 同じクラスの子は、じゅぎょう中に手をあげるのがとてもはやい。休日のできごとをはっぴょうする時も、とてもはやい。ああ、ぼくもさっと手をあげてはっぴょうしたいな。だからぼくは、ことみ先生と同じ山にのぼって、そのことをはっぴょうしよう、ときめた。
 よく晴れた五月の日曜日、ぼくはお母さんとえひめの大三島おおみしまで「わしが頭山とうざん」にのぼった。ところどころに石のいすがあって、山から見える空も海もまっ青。山のてっぺんで、ぼくはそらにむかって手をあげた。トクン、トクトクン。そうか、ぼくの手は心ぞうとつながっているのか。さむくてあつい、正直ものの手も、わるくないと思えてきた。

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